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釣り場 : 大分県

Writer : 編集部

Residence : 大分市

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上津江フィッシングパークでニジマスを釣らせる

2015年 11月 23日 18時頃

11月、職場の後輩が「釣りをしてみたい」と言い出す。作家の故開高健似のその人は、なんでも父が祖父から釣りの才能なしの宣告を受け、父の代から釣りをしていないというから、この話、親子三代に亘る。責任は重大である。ここでもし釣れなかったりしたら、事によってはこの人の家系、先祖代々子子孫孫に亘るまで釣りをしない一族にもなりかねない。これはもったいない。何しろあの釣り紀行で有名な開高氏に似ているのである。しかも文書書きが好きで、歴史小説の投稿等もやっているというのだ。「これは逸材に違いあるまい!」。

11月23日、晴れのち曇り。トモ君を乗せて阿蘇の高原を行く。このトモ君が件の逸材なのだが、もし今釣行で頭角を現し、密かに本誌に釣行文を寄稿し、私の地位を脅かすかもしれない。その脅威を防ぐ意味で、このような頼りなげな呼び名にしておいた。悪く思うなトモ君、群雄割拠の釣りライター戦国時代を生き残るには仕方ないのだ。途中、ススキ揺れる観光農園に立ち寄り、釣ったニジマスを現地食いするための食材を買ったり、小雨の中、半目を開けてまどろむ牛の写真を撮ったりしてのんびりと過ごす。なに、今回の狙いは管理釣り場のニジマス。ルアーで狙うが、魚は見えるほど沢山居る。「キャッキャ、ウフフ」の観光気分でも楽に釣れるだろう。慌てる理由は何もない。と…、現場で糸を垂れるまでは思い続けていた。

管理釣り場でタックルの使い方をトモ君に教え、私も釣り始める。いつも通りマスはそこいら中に見えている。カワゲラが飛び、小さなライズもある。しかし一向に釣れる気配が無い。なにしろ、いつもは入れ食いをしているベテランフライマンにも釣れていない。試しに岸辺のイナゴを捕まえて水面に浮かべてみる…。いつもなら十秒以内に水に引き込まれる筈…。5分後に自力で岸まで泳ぎ着き、生還した。これはヤバイ。何がやばいって、きっとこれは気温の急変などで釣り場コンディションが崩れたのだ。釣り初心者に釣らせるのはほぼ不可能。こんなひどい日
は1年に何度も無いほどひどい。

即、場所移動する。この危機に脳内ではアドレナリンがヤバイレベルで放出され、脳内リアクション芸人が「ヤバイヨー!」を連呼し続ける。「阿蘇九重キャッキャウフフ釣り体験企画」はここで「出○と行く焦燥のデスロード」と化すこととなった。計画に瑕疵(かし)は許されない。何故なら釣り↓現地食い↓感動↓俺様への尊敬の眼差し。という策略にも破綻をきたす。さらに、密かに「先輩釣り師のダメダメ釣行記」的なものを本誌に投稿される恐れすらある
のだ!「バターだ! 私にバターを!」しかもマスをバター焼きにするためのバターだけが、どこでも売りきれている。品薄なのだろうか? ススキの荒野で油脂を求めて爆走する有様は、もはやマッドマックスじみても来た。「熊河童さん落ち着いて! なんか、いま、貴方ヒュー○ンガスみ
たいになってますよ!」。

閑話休題。上津江フィッシングパークは山間の小渓流を区切って作った観光釣り場。山荘風の管理棟には産品の販売所も食堂もあり、キャンプ場まで併設されていた。釣り方はエサ釣りに限定されるが、その方が釣り体験には向いているとも思える。管理棟で釣竿とエサを受け取り、エメラルド色の川面に下りる。すぐに店の人がバケツを下げてやってくる。中身はニジマスである。その場で無造作に「ザーッ」と川に放つので、釣れるのかどうか不安になるかもしれないが大丈夫、ちゃんと釣れる。エサは人工イクラ。これを玉ウキ仕掛けのハリに1粒刺し、マスが溜まりそうな淀みに振り込む。余り流れの速い場所よりは水の動きが悪いと思えるような所で釣れる。なにしろ、ザーッと放されたばかりの魚だ。最初はトモ君に釣らせるため、エサを付けたり、振り込む場所を指示したりしてサポートに徹した。マスはすぐに釣れた。初めてのニジマスに、二人とも表情がほころぶ。苦労の末にやっと出会えた安らぎの一時だ。二人で何匹か釣り上げた後、アタリが遠くなる。バケツ一杯の放流だからこんなものだろう。微細なアタリにイクラを取られる事も多くなってきた。残りマスかな? 答えはトモ君が見付けてくれた。微細なアタリの正体は、野生のアブラハヤだった。しばし、二人でこれを狙う。大きなハリに掛けるのは難しかったが、この魚も何匹かずつ釣れた。

谷間に夕暮れが忍び込んでくる。鴉がカアカアと鳴き、家族連れが釣ったマスを焼く香りが漂って来た。もう、現地食いをするには厳しい時間なので、行きつけの居酒屋に電話を入れてみる。「花樹さん、ニジマス釣れたけど、今日行っていい?」の問いに「いいよ、もっといで」の快い
返事。

管理棟に竿を返し、ニジマスのはらわたを出してもらった。まさに至れり尽くせり。もう慌てる事は無い、のんびり帰ろう。終わりよければすべてよし、策略の事もデスロードの事も忘れ、満ち足りた気分で静かに車を出した。
HN/妖怪熊河童・記

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