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釣り場 : 熊本県

Writer : 編集部

Residence : 大分市

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行く年と来る年の狭間にコブナ釣り

2015年 12月 26日 15時頃

12月、そろそろ今年最後の釣りに行こうかと思うが、忙しさも手伝い中々腰が上がらない。色々と言い訳をつけて釣行を先送りしてきたが、ある日、私の父がこう言うのである。「甘露煮用のコブナを釣って来たよ」。コブナ…、釣りはフナに始まり、フナに終わるとも言う。今年最後の釣りをこれで閉めるのも一興だと思えた。しかも、釣れた数がやや少なく、「できればもうすこし数を足しておきたい」とも言っていた。釣りに出る言い訳さえ付けば、日程はどうにかなる。どうにかすれば良いからだ。

やっとヤル気を出し、日程を確保できた12月6日、段々畑でオレンジ色に輝く蜜柑を横目に釣り場へ向かう。石垣の間を縫い、峠を越えると眼前に有明海が広がった。しかし、今回はそこまでは行かない。途中にある用水路へと車を進める。尾田の丸池公園は名水の湧き出る場所として有名だった。その日も曇り空の下、ポリタンクを下げた数名が水汲み場に並んでいる。そのすぐ近くに道具を下ろし、ネリエを準備する。いつもの銘柄マルキユー「わたグル」を標準水量より少なめにして硬いエサにする。冬場のフナにはこれぐらいが丁度いいだろう。仕掛けはセル玉を4つ付けたシモリ仕掛けで釣り始める。

狙いはカナダ藻の群落にぽっかり空いた藻穴。これは自然に出来たものもあるし、釣り人が空けたものもある。藻刈りの道具があれば自分で開ける事もできる。藻穴の中には、大抵フナが数匹居るが、近付けば駿足で逃げてゆく。その程度の浅場だが、ネリエの集魚力で根気よく寄せれば、再び戻ってくる。しかし、ネリエの打ち込み過ぎは禁物。活性の低い冬場に大量のエサ打ちをすれば、水底に大量のエサが残る結果となり、魚は居るのに一向に仕掛けにだけは食いついて来ない結果となる。

藻穴に仕掛けをそっと垂らす。弱い流れで仕掛けは少しずつ流れ、すぐに穴の縁で止まる。そのまま1分ぐらい待ち、再びエサを打ち込む。最初の内は、魚を寄せるために少々早いペースでエサ打ちをする。ウキの沈み方が遅くなる。仕掛けが流れに逆らって動く等の変化が現れたら、エサ打ちのペースを落としてじっくりとアタリを待ってみる。水温が低いのでエサ追いは遅い。じっくりと待ってウキが横にわずかに動いたり、少しだけ抑え込まれたりという繊細なアタリを拾ってゆく。春の乗っ込み期からは想像もつかない難しい釣りになるが、そこが腕の見せ所。「フナに終わる」レベルの釣り人ならこの妙味が分かるだろうかと、分かったような事を呟きながらアタリを待つ。

分かったような事を言ったが、1匹目のアタリは全く分からなかった(笑)。もうそろそろエサが溶け落ちただろうと、3分ほど入れっぱなしにしていた仕掛けを上げてみたら掛かっていた。ううむ、まだ私は「フナに終わる」レベルには達していないようだ。まあ…釣れたから良しとしよう。ここのフナは多分、ヘラブナとの雑種だと思う。体高が高く、アタリは繊細だ。エアポンプで空気を送ったバケツに放してみると、燻銀の鱗は太陽の光を反射して時に銀に、時に金に、複雑な遷り変わりを見せてくれる。名刀のような輝きは無いが、さりとて汚い事も無い。例えるなら里の鍛冶屋が打った生活道具、素朴な鍬や出刃包丁の色を連想させる。それは目に優しく、里の冬を彩るに相応しい輝きだ。同じ穴で数匹釣るとアタリは止まる。近くに同じような穴があったら次はそこへ仕掛けを入れてみる。近ければすぐにアタリが出るはずだ。なければ、場所休めの間に作ってもいい。ヒシ藻等の希少な水草なら藻狩りを控える事もあるが、どこにでもあるようなカナダ藻なら少々刈り取っても大丈夫。藻穴を転々と移動しながら、ポツポツと釣れ続く。1回仕掛けが絡まったのを機に、立ちウキの仕掛けに替えてみる。この日は流れが弱かったためか、この方が良くアタリが出た。こういった細かい調整で釣果に差が付くのがこの時期のフナ釣り。家のすぐ近くで出来る手軽さもまた良い。

ウキが「ジワリ、ユラリ」と動くだけの繊細なアタリの中に、明確に「ツン!」と出るアタリがあった。とっさに竿を立てると、0・3号のハリスが不安になる程の引き込みが返ってきた。水面下に銀鱗が走る。ちょっと大きな半ベラだった。半ベラが藻穴を掻きまわしてしまったので、アタリが飛んだ。しかし、甘露煮の材料としては充分な数が釣れた。丁度良い引き時と思い、私も水汲み場へ行く。滾々と水が湧き出るそこには、水辺の里を見守る観音像が。少々の賽銭を上げ、私も名水を分けてもらう。水鳥が啼き、岸辺に今年最後のコスモスが揺れる。その傍にノビルを見付けたので、それも少しだけいただいた。

早めに家に帰りついたので、早速フナを調理する。甘露煮にするコブナは炭火で焼いてから干し網でカラカラに乾燥させる。大きなフナは醤油を掛けて焼いたり、ノビルと煮込んで味噌汁にした。正月気分先取りで餅も焼いてみる。見た目全く豪華さは無いが、その反面心は暖かくなる夕食だ。古き良き時代には普通に見られていた年の瀬の風景。そんな昔に思いを馳せながら、熱燗で乾杯。「来年も良い釣りができますように!」その日は遅くまで炭火の近くで呑み続けた。

HN/妖怪熊河童・記

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