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釣り場 : 熊本県

Writer : 編集部

Residence : 大分市

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川辺川に春の訪れ隙間時間に渓流ルアーを楽しむ

2019年 3月 6日 11時頃

3月、渓流解禁である。今年も解禁日から釣りたかったが、仕事の都合がつかず、6日にやっと出来た川辺川釣行も昼からとなった。しかしこの時期、ヤマメ達は人跡稀な深山幽谷よりも、むしろ人里に近い所に多い。放流魚はまだあまり遡上していないし、去年の生き残りがギンケ化して下っても来る。ちょっとした時間を見つけての、隙間釣行にも大いにチャンスはあるのだ。

霧に包まれた峠のトンネルを抜けると、眼下には深い谷間と輝く川面。車の窓を開ければきっと鳥の声も聞こえるはずだが、あいにくの雨。しかし、出遅れた釣り人にはこれはプラス要素。雨はヤマメの警戒心を解いてくれるはずだ。

昼過ぎに、いつも釣り券を買う商店の戸を引く。おかみさんは、手際よく年券を用意しながら釣況を教えてくれる。今年は、まあまあ良いようである。お金を払うとコーヒーが出てきた。急ぐことは無い、夕まずめはまだまだ先だ。店を出て、春の花を愛でながら川面へ下りると、もうそこからポイントである。梶原川の合流点をちょっと過ぎ、上流に発電所の排水口が見える辺りである。ここいらは、毎年放流のある場所で、この時期魚のストック量は多い。

時折ぱらつく雨にササ濁り、水量はまあまあ。条件としては悪くないが、先行者が入った後であることも確実。飛距離が出る自作ジグスプーンを遠投しながら、反応のある場所までどんどん進む。先程釣り券を買った店の真下ぐらいだろうか? 小雨が広げる微細な波紋の中に、ピシャリ!と水飛沫が上がった。どうやら居るらしい。いつしか周囲を黒い羽虫が飛び始めていた。ヤマメがライズを始めたのだ。

ジグスプーンをライズよりかなり上流に投げる。糸のテンションを保ちながら流し、魚のタナに入った辺りでヒラヒラとヒラ打たせる。海でやるスロージギングの要領だ。ロッドはトラウト用だから、ヘロヘロである。ラインはフロロ3ポンド。ルアーはおそらく4gぐらい。海のジギングに比べたら、何もかもがミニチュアサイズだが、心は大海原に相対するのと同じである。ミニスロージギングでポイントを流すこと数投。斜め上流に投げたルアーが、糸に引かれて向きを変えるタイミングだと思う。水中で、キラリと金属光沢が瞬き、ロッドに重みが乗った。そのまま巻き上げてくると。ロッドティップは確かに生命感にうち震え、澄んだ水の中を銀箔のような輝きが近づいてくる。今年初のヤマメは小さかったが、1匹は1匹である。もうこれでボウズじゃない。心安らかに流れを遡ることにしよう。

やがて、発電所の吐き出し口でもうちょっと大きいのを1匹。後が続かなかったので、更に上流を目指すが、そこから水量が一気に半分以下になり、流れは極端に細くなった。ぱっと見、魚は居そうにない。しかし、こういう所ほど竿抜けである。自作スローシンキングミノーで、小さな小さな滝壺一つ一つを打ってゆくと、その中でちょっと小深くなっている部分で、またギラリと魚が光った。今度は少し重いようである。慎重に巻寄せて網に掬うと、大きな小判型のパーマークも鮮やかな美ヤマメが姿を現した。単なるカタカナ表記では表現しきれない、これこそが本来の「山女魚」なのだろうと思わせる川の宝石である。

小雨に打たれながら川を遡る。山女魚達は遅く来た釣り人にも、そこそこ相手をしてくれた。しかし、そこはそれ、「ここぞ!」という良いポイントからは全く出てこない。B級・C級の場所から、あまり大きくない魚がちょっとだけ出てきてくれる。まあいいだろう、ボウズではない。まずは今年初の渓流釣行を楽しもうではないか。

発電所のダムに行き当たる。ダム下の滝壺には多くの魚がストックされているはずであるが、もう、その日は何度ルアーを通そうが全く反応は無かった。ダムの上に上がって更に上流を攻めようか? どうしようか? 時刻は午後5時。夕まずめにはまだ遠い。上がりかけた道すがら、田んぼから流れ落ちる小さな滝壺に、クレソンの群落を見つけた。おそらく、以前栽培されていたものが野生化したものだろう。瑞々しいその葉を一掴みいただく。

対岸で鋭く鹿が一啼きした。彼らは今出てきたところだろうか? それともねぐらに帰ろうと仲間に呼びかけているのだろうか? そんな事を思う内に、私も家が恋しくなってくる。家の猫も釣果を待っているだろう。そのまま早上がりする事にした。

谷の夕暮れは早い。国道へ上がる頃には暗くなり始め、谷間に霧が這い込んでゆく。その頃になって発電が止んだのか、先程まで釣っていた細流にドウドウと水が流れ始めた。今頃、山女魚達はいそいそと上流へ向かっているに違いない。今夜は初釣果を肴に、ささやかな宴を開こう。かけがえのない川の宝石、山女魚達と豊かな山の自然がいつまでも続くことを願って、乾杯しようではないか。

HN/妖怪熊河童・記

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