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釣り場 : 熊本県

Writer : 編集部

Residence : 大分市

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って言うか、今、敢えてベラ

2019年 1月 1日 0時頃

「ベラ」、九州でこれを狙って釣る人はまず居ない。投げ釣り、磯釣り、ルアーライトゲームなど、様々な釣り方で掛かってくるが、大方は単なるエサ盗り、外道扱いを受けている。しかし、私が下関に住んでいた頃、しばしばこれが魚屋に並んでいて、場所によっては外道扱いを免れているのだと知った。実際下関ではこれがよく釣れ、現地では「ギザミ」の名で通っていたと思う。

ベラと言っても種類が多く、日本近海には150種類も居るらしいが、釣り人がベラと言えば、多くの場合キュウセンかササノハベラを指すことが多い。昼の間、藻場や磯でエサを摂り、暗くなると砂の中や岩の窪みに入って眠るという。だから夜には釣れない。色は熱帯魚的カラフルさで多少毒々しくも見えるせいか、食用とされるのは一部地域にとどまる。

キスの投げ釣りで掛かってくる外道としては、メゴチと並んで双璧である。メゴチの方は、以前は見釣りができるほど、どこにでも多く居たが、今はあまり掛かってこない。多分、タチウオに似た食感の美肉が評価され、狙われやすくなったのだと思う。ベラも身の美味しさは知る人ぞ知るところで、アマダイにちょっと似た上品な味は、そのうち評価されるようになるかもしれない。って言うか、今のうちにこのベラの釣趣と食味に注目していることをアピールしておけば、行く行くは私もベラングの第一人者として専門書を出し、印税で左団扇の生活を送れはしないだろうか?

そう、今こそベラである!

6月12日、長潮。そのような野望と妄想を胸に、天草、本渡の瀬戸へ車を走らせる。4月のキス投げ釣りで、良い形のキュウセンが釣れた場所である。午後1時、長潮の下げ止まり付近でまずは1投。有明海と八代海を繋ぐ細い水道であるココは、潮流が速く、8号オモリが付いたキス2本バリ仕掛けも少しずつ流れる。ハリは流線10号、ツケエはベラに突かれた時のことを考えて、エサ持ちの良い中国虫を選んだ。

あまり流し続けると、アマモに引っ掛かるだろうなあと思い始めた時に、竿先を細かく小突くようなアタリが来た。巻き上げてみる。薄緑色の海面に、柳葉状の魚体がキラリと光る。抜き上げてみると、幸先も良くキュウセンの雌が掛かっていた。よく見れば、頭から尾にかけて淡紅色のストライプが走る中々の美魚である。今日は楽な取材になりそうだぞと安堵したが、以後、連チャンで良型のキスが掛かってくるのみ。それでも「しょうがねえ、ああしょうがねえなあ」とぼやきながらも表情は恵比須顔である。

…いかんいかん、ベラである。ベラを求めて場所移動する。以前、アジングに行くときに通り掛かった浜が良さそうに思え、そこへ直行。遠く対岸に長崎を望むその場所は、白砂青松で景色は抜群。しかも岩礁が点在するベラのポイントとしては、絶好と思える砂浜である。偏光グラス越しに海面を見れば、藻場まで点々と見える。下関でベラを釣っていたのは、丁度こんな場所だった。

まずは、藻際へ1投、仕掛けが着底するなりコツコツとあのアタリが来たが、ツケエだけ盗られて空振り。歯の強い魚である、食い込むまで突つかせた方が良いのだろう。ツケエを付け替え、2投目、今度はアタリが来た時に竿先を送り込んで少し待つ。すると、すぐにギューンと強い引き込みが来た。今度こそはと慎重に巻き上げると、緑色も鮮やかなキュウセンの雄が釣れた。

小移動しながら釣り続ける。他の釣魚と同じで数を稼ごうと思ったら、その日のアタリパターンを見付ける必要があり、思いのほか難しい。イージーに置き竿でも釣れるが、工夫すればしただけの成果はあり、中々に奥が深い。ある場所ではキュウセンばかりが掛かったが、投入点を10mずらすだけでササノハベラばかり掛かるという事もあった。チヌかと思える強い引き込みで掛かって来たササノハベラなどは、ちょっと油断するとすぐに海藻に逃げ込みそうになる。やはり、ベラも専門で狙ってみると面白い魚なのだ。同じポイントでカサゴやトラギス、時々キスも釣れる。投げ五目釣りのつもりでやるのも楽しいだろう。午後の陽射しが白砂に長い影を引く頃、活かしバケツの中は赤や緑の花が咲いたようにすっかり賑やかになった。

数的には十分だろう、行きつけの店、食処花樹の大将に電話をして、街へ向かう。大将に魚を渡すと、この魚の素性を知っていたのか、すぐにいくつもの料理になって出てきた。天ぷら、塩焼き、鉄板焼きなど、いずれの料理でも、ふっくらとした身に上品な旨味が内包された素材の良さが十二分に出ていて酒も進む。ベラは日本中に居て、ほぼ誰にでも釣れる。そして、食べても美味しい。本当は良い奴なのだが、希少性が無いばかりに一段下に見られてしまうところが惜しい。

例えば、道端に咲く名もない花のように、いつでも誰にでも微笑みかけてくれる、そんな人に心当たりは無いだろうか? ベラもきっとそんな奴なのである。本当に良い奴っていうのは、そういう者なんじゃないだろうか? そんな事を思う内に、冷酒の瓶が1本空いた。やはり、今こそベラなのではないだろうか。

HN/妖怪熊河童・記

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