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釣り場 : 大分県

Writer : 編集部

Residence : 大分市

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源流のイワナに逢う

2016年 9月 8日 14時頃

クロ釣り名人として知られる池永さんは、実は渓流釣りも楽しむ釣り師。20年以上前の本誌を紐解くと、若かりし頃の池永さんが、藤河内渓谷で釣りを楽しむ姿があった。クロ釣りにのめり込んでいた頃、夏には渓流釣りを楽しんでいたそうだ。ところが、そんな池永さんが渓流釣りをピタリと辞めたのには訳がある。「できるだけ天然の綺麗な魚が釣りたいのに、おそらく放流漁と思われる魚ばかりが釣れるようになったから」(池永さん談)。年々後退する自然環境の中、現在では殆どが放流魚となり、ネイティブのヤマメやアマゴの姿はほとんど見かけない。「昔は大分川と大野川のアマゴにはそれぞれ特徴があり、見分けることができた」と話す池永さんはどこか寂しげであった。

そんな池永さんのブログに、一通のコメントが入った。マス科の魚、特にヤマメやイワナを研究している大学生からのコメントだ。「池永さん、初めまして。実はヤマメやイワナを研究している過程の中で分かったことですが、通説では九州にはイワナがいないため、現在釣れるイワナはどこからか放流された魚と言われていますが、もしかするともともと居た可能性があるのです」。魚類学会もビックリのこのコメントに池永さんは目が飛び出した。すぐにコメントを返し、情報のヤリトリを開始。まとめると、こうなる。

「明治時代に出版された本の中で、イワナを釣って食べていたとの記述がありました。明治時代に放流するとなると、一番近いところで、中国地方のゴギなどが最も有力な放流魚です。交通手段は馬・自転車? 九州のこんな山奥までどうやって運んだのでしょうか? それとも、この谷にはイワナが脈々と生息していたのでしょうか?」。非常にロマン溢れるヤリトリに、「放流物には手を出さない」といったポリシーを頭の片隅におき、イワナ釣りに出かけた池永さん。

実は、今年春にも同じ源流へ足を運んでいる。宮﨑駿監督の「もののけ姫」に出てくるような山奥。川の瀬々やぎと風の音がリズミカルに響く源流部で、岩陰からそっと覗くと、ウワサ通りそこに居た。イワナだ!ヤマメやアマゴよりも細い魚体をクネラせ、尾ビレや胸ビレの縁に輝く白色を、ギラギラッと輝かせながら泳ぐ姿に胸の鼓動が高鳴る。早速竿を出してみたが、この日はノーバイト。池永さんのエサは見向きもされなかった。残念、でも居た。久々に感じる憧れの魚との出会い。釣りたい。釣りの虫がウズウズと騒ぐ。

9月8日、晴れ。前日に降った雨、適度な水量となっているはず。本日は予定もない。行くしかない。朝5時に起床し、すぐに身支度を済ませ、車に飛び乗る。エンジンをかけると、もう気持ちはあの源流へ向かっていた。再びあの岩陰にそっと近づく。やはり居た。そこにイワナが居た。もしかすると脈々と血を受け継いできた可能性のあるイワナ。九州産のイワナと言われると俄然手にしたくなる。渓流竿に目印、ハリと至ってシンプルな仕掛けに、ミミズをチョン掛け。小さな落ち込みにそっとツケエを潜りこませる。

クルクルクルッといきなり竿先にアタリ。軽くアワセると、体をクネラせて抵抗する魚信が伝わる。ヤマメやアマゴよりは引かない。体高がなく体が細い分、クネクネと体をクネラせるので、竿にはその振動が伝わる。初めての魚。水面から抜き上げたのは、体長18㎝ほどのイワナ。「赤い! 綺麗じゃ!」と思わず手が震える。源流部には早くも秋が訪れているようで、釣り上げたイワナは薄っすらと婚姻色に染まっていた。続けてもう一投。今度もクルクルと穂先を曲げるアタリ。今度は今年産まれたばかりと思われる15㎝ほどの小型イワナ。顔がおどけない。春に訪れた時は、アブラメと思われるような小さな魚もいると思ったが、この日は、ほぼイワナばかり。源流部だけにエサも少ない、生存競争も厳しいものがあるだろう。岩の影に隠れながら点々と釣り上がると、ぼつぼつと釣れるイワナはどれも婚姻色に染まった綺麗な魚体を見せてくれた。1匹だけ食べてみるために持ち帰り、あとはリリース。池永さん初のイワナは237魚種目の魚となった。

「仮に明治時代に放流されたとしたら、交通手段は馬・自転車? 九州のこんな山奥までどうやって運んだのでしょうか? それとも、この谷にはイワナが脈々と生息していたのでしょうか?または、そんな文献はまやかしもの?昭和の時代に入って交通網が整備され、釣具が進歩し釣り人が増えて、誰かがイワナを放流したのでしょうか?少なくとも私が九州ノータリンクラブに所属した昭和53年には、この渓流にはイワナが生息している事を知っていました。ただし、その当時は放流物には手を出さないという、自分なりのポリシーがあったので、イワナを狙っていなかっただけなのです。

10年前にブログを開設、釣魚のライフリストが増えるにつけ、2時間程度移動して竿を振れば、イワナが釣れるので、ブログで紹介するもの良いとの考えで釣りました」とは池永さんのコメント。

帰宅途中、山鹿が車の前と横切った。逞しく美しい姿の鹿は、横目で池永さんをチラリと見た後、山奥へ消え去った。「また来いよ」と言ってくれたようで、嬉しかった。イワナが九州に居たか否かは、我々釣り人には分からない。いずれは魚類学者が解明してくれることを期待したい。でもそのような事実よりもやはり、脈々と血を受け継いでいる自然の力に敬意。このままの自然をできる限り残して行きたい。自然にはそれだけの価値がある。

撮影=池永祐二
帰宅途中、山鹿が車の前と横切った。逞しく美しい姿の鹿は、横目で池永さんをチラリと見た後、山奥へ消え去った。「また来いよ」と言ってくれたようで、嬉しかった。イワナが九州に居たか否かは、我々釣り人には分からない。いずれは魚類学者が解明してくれることを期待したい。でもそのような事実よりもやはり、脈々と血を受け継いでいる自然の力に敬意。このままの自然をできる限り残して行きたい。自然にはそれだけの価値がある。

撮影=池永祐二

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